2020.04.14

「教師」になっていたかも…!?  Vol.5 映画監督 上田慎一郎さん

さまざまな分野で活躍する有名人の方々を直撃インタビュー。

もしも今の仕事をしていなかったら、どんな職業を選んでいたかを想像していただきました。
どんなお話が飛び出すでしょうか。

 

Vol.5 映画監督 上田慎一郎さん

制作費わずか約300万円の自主制作映画として撮った『カメラを止めるな!』が動員数220万人以上、興行収入31億円を突破する大ヒットを記録し、すっかり有名になった映画監督・上田慎一郎さん。待望の劇場長編作品第2弾『スペシャルアクターズ』も2019年10月18日(金)より全国公開される。

そんな上田さんが、もしも映画監督になっていなかったら、やってみたい職業とは?

うえだ・しんいちろう●1984年、滋賀県出身。中学生のころから自主映画を撮りはじめ、高校卒業後も独学で映画を学ぶ。2009年、映画製作団体PANPOKOPINA(パンポコピーナ)を結成。『お米とおっぱい。』(11年)、『恋する小説家』(11年)、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016短編部門奨励賞に輝いた『テイク8』(15年)など8本の映画を監督。国内外の映画祭で20のグランプリを含む46冠を獲得する。15年、オムニバス映画『4/猫 ねこぶんのよん』の一編『猫まんま』を監督し、商業デビュー。18年6月23日に公開した初の劇場用長編『カメラを止めるな!』は2館から350館へと拡大公開され、動員数は220万人以上、興行収入は31億円を突破。異例の大ヒットとなった。妻であるふくだみゆきの監督作『こんぷれっくす×コンプレックス』(17年)、『耳かきランデブー』(18年)などではプロデューサーも務めている。「100年後に観てもおもしろい映画」をスローガンに娯楽性の高いエンターテインメント作品を創り続けている。

 

――映画監督になっていなかったら、やってみたかったなと思う職業はありますか?

教師です。別の人生があるとしたら、学校の先生とかになってみたいなと思います。

 

――なぜ学校の先生に?

若い子たちが好きだからというのが理由のひとつです。チームというものが好きなんでしょうね、やっぱり。映画も、ひとつのチームを作り上げるようなつもりでいつも撮っています。

学校のクラスってひとつのチームじゃないですか。教室には、不良やお調子者もいれば、優等生っぽい人もいる。個性がバラバラの人たちがいるなかで、リーダーとして旗を振るのが教師の仕事だとすれば、映画を作るということと通じる部分もたくさんあるなと。あと、僕は人に何かを教えるっていうことも好きなので、先生の仕事っていいなと思いますね。

 

――教えることの何が好きなんでしょう?

そうですね…。何かを「教える」というときの、上からの感じとは違うんですけど…。

例えば、『カメラを止めるな!』も『スペシャルアクターズ』も、出演者のほとんどが無名の役者たちでしたが、みんな、撮影前と撮影後ではどんどん変わっていくんですよ。ものすごく成長するんです。

撮影中はもちろん、作品の宣伝期間が始まってからも、「この作品を盛り上げていこう」と自発的に宣伝活動に協力してくれたり。なんか、それぞれの成長が見えるんですよ。『スペシャルアクターズ』の主人公・大野和人を演じた大澤数人も、すごく変わったなと思います。演技もそうですけど、撮影前の顔合わせの段階では、出演者のなかでひとりだけLINEのアカウントも持っていなかったようなタイプなのに、作品完成後はTwitterで発信したりしていて。

そういう姿を見ると、うれしいなと感じるんです。だから、教えるというよりは、人が成長していくのを見るのが好きなのかもしれないですね。映画も人の成長を描くものだったりもするので。

 

<就活生の「つぶやき」コーナー>

就職プロセス調査の回答者から寄せられた「つぶやき」に上田監督からコメントをいただきました!

 

<上田さんチョイスの「つぶやき」>

そこそこの幸福で妥協できることが大切なのだと感じる。

(就職プロセス調査 大学生・文系・男性)


学生のみなさん、いろんなことを考えているんですね。


 

――読んでいただいたなかで、この「つぶやき」をお選びになったのは?

いやあ、この「そこそこの幸福で妥協できることが大切だと感じた」というのが、気になりますよね。何があったんだろうって。


理想が大きかったということなんでしょうかね。理想が大きかったけれど、そこにたどり着けなくて、第一志望ではない会社に入ることになって、妥協しなければと感じているのかな。

 

――いろいろと想像が膨らむ「つぶやき」ですよね。上田さんご自身は理想がかなわなくて、同じようなことを感じたことはありますか?

うーん。幸せになろうって思っていないかもしれないです、あまり。

 

――幸せになろうって思っていない、ですか。

あの…。僕の短編作品(2015年制作『テイク8』)で、主人公の彼女が「誰が幸せになりたいって言った? 幸せになりたいならもっといい人探すわよ。不幸になってもいい。だからあの人なんじゃん」と言うんですが、この言葉が、僕の考え方を表しているかもしれません。

よく結婚式で新郎新婦が「幸せになります」と言いますよね。僕は、それをすごくうさんくさく感じていたんですよ。幸せになるから結婚するというのは、自分の利益を考えているわけじゃないですか。だけど、結婚というのは、その人となら不幸になってもいいくらい一緒にいたいからするものだと思うんですよね。それと同じで、僕が映画を作るのも、地位や名誉だったり、お金とかが手に入るからやっているのではなくて、映画と一緒なら不幸になってもいいと思うくらいやりたいからやっているわけで…。

だから、「そこそこの幸福で妥協できることが大切」とこの方が感じてしまったというのは、ちょっと切ないですね。まあ、現実にはいろいろ難しいことも多いですけど、「不幸になってもいいからこれをやるんだ」というものが見つかれば、人生がまた走り出すんじゃないかなと思ったりします。学生の皆さんの人生はまだまだこれから。応援しています。

Information

上田さんの新作映画『スペシャルアクターズ』が2019年10月18日(金)より全国公開される。緊張すると気絶してしまう役者・和人が、演じることを使った何でも屋「スペシャルアクターズ」の仲間とともに、「カルト集団」に立ち向かう。上田さんは監督・脚本・編集・宣伝プロデューサーを担当。本作は「作家主義」×「俳優発掘」をテーマに掲げる、松竹ブロードキャスティングによるオリジナル映画プロジェクト第7弾作品。1500名を超える応募の中から発掘された、ユニークな経歴の俳優15名が出演する。前作『カメラを止めるな!』同様、鑑賞後に身近な人と語り合いたくなる作品だ。
 

 

※本文は2019年取材時の内容で掲載しております

取材・文/泉 彩子 撮影/鈴木慶子 

 

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