2020.09.25

Vol.12 富士通株式会社<実施編> 【新型コロナウイルス感染症に関する企業の取り組み】

新型コロナウイルス感染症の影響で、企業と学生のコミュニケーションの在り方が大きく変化している。対面で行われていた説明会や面接などがオンライン化し、時間的・金銭的な学生の負荷は軽減。一方、「話が伝わっていないのでは?」「面接の評価が低くなるのでは?」といった学生の不安の声も大きい。そこで、すでに学生とのコミュニケーション手法の改革を実践している企業に利点や課題、学生へのメッセージを伺った。

リモートワークの浸透が進む富士通の
「今の現場」を学生に体験してもらえた

富士通株式会社
人材採用センター マネージャー
渡邊 賢さん

※記事は、2020年9月15日にオンライン取材した内容で掲載しております。

 

COMPANY PROFILE

ICT分野において、各種サービスを提供するとともに、これらを支える最先端、高性能かつ高品質のプロダクトおよび電子デバイスの開発、製造、販売から保守運用までを総合的に提供する、トータルソリューションビジネスを行っている。2020年7月にはテレワークを基本とした新しい働き方の推進を発表。新たな働き方を支える人事制度として、「ジョブ型」の雇用制度への転換も段階的に進めている。

 

オンラインインターンシップ実施の経緯や内容、プログラム立案にあたっての工夫などは「Vol.10富士通株式会社<プランニング編>」をご覧ください。
 

Vol.10 富士通株式会社<プランニング編> 【新型コロナウイルス感染症に関する企業の取り組み】

 
 

オンライン化に伴い、スムーズな実施のために工夫されたことは?

 

受け入れ部署へのオンライン説明会を4回実施したほか、管理職やメンターとなる社員に配布するガイドラインを充実させました。内容は、インターンシップの実施目的といった基本的な内容に加え、オンラインツールの操作方法や、オンラインでの学生とのコミュニケーションの注意点などをまとめたものです。
 
また、例年は実際に学生が職場に入り込み、実務を通じて富士通の業務内容を体感してもらっていましたが、今回は全面オンラインでの実施となるため、社員が学生に対して課題発見からソリューション提案、システム開発まで、ワークに必要な情報やノウハウをインプットする必要があります。そこで、職場の準備を少しでもサポートできたらと、各回に必要な情報やポイントの見せ方をイメージできるような資料(サンプル)を職場に提供し、学生がワークを進めやすくするようサポートするとともに、富士通の業務に必要な取り組みレベルを学生に体感いただきました。
 
完成したプレゼンテーション資料については、必要な項目が抜けていないかを人事でチェックしましたが、内容は各部署に任せました。それぞれの違いから、パワーポイントのスライド1枚でも職場の個性は伝わると感じましたね。今年から新たにインターンシップに参加した部署もありましたが、提供したツールをしっかり活用して主体的に準備を進めてくれ、ありがたかったです。

 
 

オンライン化による学生とのコミュニケーションやワークの進捗への影響は?

 

現在は1タームが終了したばかりで、学生・社員双方からの詳細な振り返りはこれからですが、各職場からは「意外とスムーズに実施できている」など概ね好評価をいただいています。ときどきメンターと学生とのやりとりをのぞかせてもらうと、オンラインでも円滑なコミュニケーションが多くみられ、従来通りの信頼関係を築けていると感じました。
 
「Field Learning コース」、「Skill Challengeコース」ともに、毎日メンターと学生の定例ミーティングの時間を設けているほか、メンターに相談したい時は随時接続できる環境を整えました。メンターは基本1チームにつき社員ひとりが担当していますが、業務の状況に応じて複数の社員でメンターを担当するなど各職場で臨機応変に調整しながら、細やかに学生のケアをしてくれています。
 
ワークの進捗もスムーズだったと感じています。メンターのケアにも感謝していますが、学生の意欲が非常に高く、自律的に作業に取り組んでくれました。「Field Learning コース」は初対面のメンバーとリモート環境で連携しながら作業を進めていく難しさがありましたが、自主的に役割分担を決め、チャットツールやオンラインホワイトボードなど補助ツールも必要に応じて使いながら、お互いに助け合って力を発揮してくれた学生が大多数でした。「Skill Challengeコース」はひとりで作業をする時間が多いので、モチベーションの維持を少し懸念していましたが、進捗が遅れる学生はほとんどおらず、むしろ作業に集中し過ぎて休憩をあまり取らず、メンターから休むよう声がけをしたケースもあったほどです。
 
これらの結果、受入職場の学生理解度は例年と変わらないレベルと感じています。担当した学生が大学で取り組んでいる最新の研究や、身につけている専門性に個人的にも関心を持ち、インターンシップ後も学生と継続的にコンタクトを取りたいと話す社員がいるなど、社員と学生が相互に学び合っていることも、人事としてはうれしいですね。
 
また、職場の雰囲気を少しでも感じてもらうために1時間程度のZoom懇親会の実施を事前にお願いしていましたが、複数回開催した部署も多く、メンター以外の社員も積極的に参加して盛り上がったと聞いています。最終日の成果発表会では、受け入れた学生の成長をひと目見ようと、受け入れ部署の社員がほぼ総出で、数十名がオブザーバーとして参加したケースや、本部長自らが成果発表に参加し、一人ひとり丁寧にフィードバックを行う等のケースもありました。オンラインだからこそ気軽に、時間の拘束なく参加できたという側面もあったかもしれません。
 
このように、オンラインのメリットを最大限に活用し、新しいインターンシップの形を富士通全体として作り上げることができたことは非常に良かったと思っています。

 
 

オンラインインターンシップを実施して良かったこと・改善を検討していることは?

 

まず良かったのは、応募者が昨年の約2倍と、より多くの学生に関心を持っていただけたこと。また、オンライン化によって地理的なハードルが解消されたことに加え、オフィスに来るという物理的な制約がなくなり「大学の研究室の予定があり、初日の数時間だけ抜けたい」といった学生の個別の事情に少し対応しやすくなった影響が大きいと分析しています。例年学生には個別でワークに取り組んでいただいていましたが、今年はField系をチームでのワークとすることによって受け入れ人数を昨年の約1.5倍に増やし、「Field Learning コース」274名、「Skill Challengeコース」52名が参加。これまでにない数の学生と出会えたことは、非常にうれしい変化でした。
 
ITの面白さや、当社の人材や技術の力を、オンラインだからこそ学生に実感していただけた面もあったと思います。オープニングのオリエンテーションでは、当社のシニアエバンジェリスト(自社製品の特徴から最新のテクノロジーやIT業界のトレンドを、クライアントやユーザーに向けてわかりやすく解説・啓蒙する仕事)が業界説明を担当したのですが、最先端の内容を映像など視覚的要素も効果的に取り入れた迫力のあるプレゼンテーションで、学生からチャットで大きな反応がありました。
 
社会人と話すことに慣れていない学生にとって、オンラインでのコミュニケーションは対面よりも緊張しにくく、社員に気軽に話しかけやすいのも良さだと感じました。とくにチャットは相手の発言への反応を示しやすく、これまで対面では表出しなかった学生の関心度が高い物事の傾向や疑問を私たちが把握するためにも役立ちました。また、人事と受け入れ部署の情報共有はオンライン化により双方の都合を合わせやすくなり、対面よりスムーズでした。
 
例年は学生に一台ずつノートパソコンを貸し出し、最先端のデジタル環境での実務を体験していただいていましたが、今回は時間的制約からセキュリティ問題のクリアが間に合わず、学生の皆さんにパソコンをご用意いただきました。そのために参加できなかった学生がいる可能性もあり、大変申し訳なく感じています。次回以降は貸し出しができるよう方策を検討中です。このほかにも、より充実した内容を目指して改善したい点はいくつかありますが、今回の気づきを生かして工夫することにより解決できることがほとんどです。
 
もちろん「メンターやほかの学生と会って交流を深める」「職場に身を置き、雰囲気を肌で感じたり、部署全体の仕事内容を知る」といったオンラインでは伝わりづらいこともありました。ただ、学生とのつながりは今後も続いていきますので、新型コロナウイルス感染症の状況をみつつ、オンライン・オフラインをうまく併用しながら、さらに富士通の魅力を伝えられるコンテンツを提供できればと考えています。
 
プログラムに参加した学生からは、「実践的な課題に取り組むことができ、コンテンツも多様だった」「予想していた以上に社員の方たちと関わることができ、社員のフォローも丁寧だった」という声を数多くいただいており、今回のインターンシップには大きな手ごたえを感じています。とりわけうれしかったのは、「オンラインインターンシップでここまでやれるのかと、イメージが変わりました」という言葉です。業種特性もあり、オンラインで実施したからこそ富士通のビジネスの魅力をより感じていただけたところもあったのではと自負しています。

 
 

インターンシップに関連して、今後新たに考えている取り組みは?

 

富士通では現在、国内グループ従業員約8万人を対象にリモートワークを基本勤務形態としています。これは以前からの経営改革の一環。新型コロナウイルス感染症の収束状況にかかわらず、オンライン環境下で業務を行い、成果を出すことは当社の社員にとって当たり前になりつつあります。一律にオフィスに出社し、同様の働き方をしていく状態から、多様な働き方が当たり前になっていく。今回のオンラインインターンシップでは、社内会議に入ったりアポイントに同席したりするなど、まさに富士通の「今の現場」を学生に体験していただけたことに大きな意味を感じております。オンラインでの仕事体験もこれから当たり前の現場の一つであり、この形式のインターンシップは今後も実施していきます。
 

さらに、「学業に支障を与えずに実施しやすい」というオンラインのメリットも確認できたことから、インターンシップの通年化や、3カ月ほどの長期受入も前向きに検討中です。実施スタイルは完全オンラインだったり、対面とのハイブリッドとしたり、社会情勢や受入部署の事情を鑑み、また学事日程も考慮しながら柔軟に考えたいと思っています。
 
インターンシップのパターンが多様化すれば、学生、受け入れ部署双方の選択肢が多くなり、学生がさまざまな職種や仕事をつぶさに知る機会も、各部署の社員と学生の出会いの機会も増えます。職場が直接解放されてくこの流れは当社が2022年度採用から予定している「ジョブ型採用」とも親和性があり、今回のオンラインインターンシップ開催から得た手ごたえは、当社の多様な採用の在り方にも影響を与え、今後の可能性を大きく広げたと感じています。

 
 

学生の皆さんへ

 

これからの時代に皆さんが社会で活躍するためのキーワードは、「自律」です。かつては会社がキャリアの道筋を作ってくれた時代もありましたが、今は違います。会社は機会を提供してくれますが、選択するのは個人。ある場所でどんなに成果を出しても、次に自分が目指す場所はどこなのか、そこに行くために自分は何をすべきかを常に考えながら、仕事と自己研鑽(さん)を両立しながらキャリアを築いていかなければ、自分を輝かせ続けることができません。
 
社会で輝くために、皆さんには、自分で考え、自分で行動することを今のうちから意識し、少しずつ自律的な姿勢を身につけていただけたらと願っています。インターンシップはその訓練をする絶好の機会。インターンシップを通してさまざまな会社や仕事を知ることによって、自分が得意なことや、やってみたいことは何かを考え、自分が輝けるポジションを探求していただきたいです。そのために、企業がサポートできることは、大学とも連携しながら積極的に実施していきたいと考えています。

 

メンターとの定例ミーティングの画面。開始時間は自由に設定してもらった。

 

学生同士のディスカッションの様子。オンラインホワイトボードの付せんがZoom画面に収まりきらないほど議論が白熱した。

 

Zoom懇親会の様子。開催のタイミングや内容は部署ごとに異なる。

 

「Skill Challengeコース」に参加した学生の成果発表会で試作プログラムについて説明している様子。テーマは「Webアプリ開発生産向上に向けたアーキテクチャ研究」。

 

「Field Learning コース」の成果発表会の様子。テーマは「アフターコロナを支えるニューラル機械翻訳を使った新しい価値提供」。

 

最終日のクロージングの様子。インターンシップでの学びを持続的な自己成長につなげてもらうために、実施後の振り返りも重視している。

 

*インターンシップ参加学生の声*
 
・オンラインのメリットを最大限に活かしたインターンシップであり、在宅勤務を推進している企業であると感銘を受けました。
 
・メンターの方だけでなく、多くの社員の方々が気さくに話してくださり、アドバイスも適宜もらうことができました。また、ディスカッションをしやすい雰囲気作りから社風への理解まで促してくださり、より部署の雰囲気を感じることができました。
 
・大学で研究しているテーマに関連する知識を持った人がいたため、研究についてのアドバイスをいただくことができ、今後の研究にとって非常に勉強になりました。
 
・非常にいい経験ができ、自己成長につながる多くの学びが得られました。中でも、「”正しい正しくない”ではなく、”どれも特徴があり、その中でどれが最適か”という考え方」を学べたことは、大きな学びでした。

 
 
*受け入れ部署の社員の声*
 
・通常業務より高い視座でプロジェクトの進み具合や個々人の資質、コンディションを観察する意識が高まりました(メンター)。
 
・インプット資料のサンプル資料があったのはとても助かりました(メンター)。
 
・メンターの成長に大きくつながったと感じています。また、オンラインで、どのように円滑にコミュニケーションを図るかを実感できました(幹部)。
 
・オンラインだけだと学生も職場への理解は限定的になると感じるので、可能な状況であれば、オンラインと現場を併用できたらよいと感じました(幹部)。

 
 
オンラインインターンシップ実施の経緯や内容、プログラム立案にあたっての工夫などは「Vol.10 富士通株式会社<プランニング編>」をご覧ください。
 

Vol.10 富士通株式会社<プランニング編> 【新型コロナウイルス感染症に関する企業の取り組み】

 
 

取材・文/泉 彩子