2020.05.14

Vol.2 小林製薬株式会社 【新型コロナウイルス感染症に関する企業の取り組み】

新型コロナウイルス感染症の影響で、企業と学生のコミュニケーションの在り方が大きく変化している。対面で行われていた説明会や面接などがオンライン化し、時間的・金銭的な学生の負荷は軽減。一方、「話が伝わっていないのでは?」「面接の評価が低くなるのでは?」といった学生の不安の声も大きい。そこで、すでに学生とのコミュニケーション手法の改革を実践している企業に利点や課題、学生へのメッセージを伺った。

 

リアルの面接との違いや接続トラブルが
評価に影響を与えないよう仕組みを工夫

小林製薬株式会社
グループ統括本社
人事部 人事企画グループ
栗原 栞さん


※記事は、2020年5月12日にオンライン取材した内容で掲載しております。
状況に応じて、内容に変更の可能性がございますので、最新状況は こちら でご確認ください。

 

新型コロナウイルス感染症拡大に対応するため、採用活動において取り組まれていること、配慮されていることは?

 

全職種・全選考過程をオンライン化しました。また、例年、適性検査(SPI)をテストセンターで受検していただきますが、今回は特別措置として選考においては免除しています。2月下旬に方針決定し、3月初旬に採用サイトのマイページや『リクナビ2021』などでアナウンスしました。
 

実は、説明会のオンライン化については、2021年度新卒採用から実施することをすでに2019年に決定していました。学生に時間を効率的に使っていただくことと、移動の負担を減らし、遠方に住む学生にも応募の機会を広げてもらいたいという思いからです。同じ理由で、Web面接の部分的な導入も検討し、新型コロナウイルス感染症がニュースで報じられるようになったころには、すでにWeb面接プラットフォーム(HARUTAKA)の契約を進めていました。結果的に、オンライン化の決定・実施は比較的スムーズだったように思います。
 

オンライン化にあたり気をつけたのは、応募者の企業研究に支障が出ないよう、情報発信の内容や方法を工夫することです。例えば、オンラインで配信する説明会動画は、内容を精査してわかりやすくするのはもちろん、視覚的にも印象に残る編集を意識しました。また、動画は長すぎると見づらいので、企業理念や事業内容は1本あたり17〜18分の動画にまとめ、職種ごとの説明については5職種(研究職、技術職、営業職、生産技術、SE職)それぞれ2〜3分のアニメーション動画を用意。希望職種の動画を選んで見ていただけるようにしています。
 

面接は例年、営業職・SE職はグループワーク、それ以外の職種は集団面接を実施した後、2回の個人面接を経て、最終面接という流れですが、グループワークや集団面接をWebで再現するのは厳しいと判断し、個人面接を1回増やしました。なお、説明会で質疑応答を実施する代わりに、1次面接と2次面接で質問タイムを設けています。
 

また、最終面接の前に、先輩社社員1名と人事スタッフ1名、学生10〜15名程度によるWeb座談会を設けています。研究職の採用ではもともと研究所見学の際に座談会を行っていましたが、他職種においては初めての試みです。面接で多くの学生から「社員と直接会う機会が持てないのが残念」という声を聞き、急きょ全職種を対象とした実施を決定しました。座談会はチャットで質問を受け付けて回答する形式です。最近スタートしたばかりですが、予想以上に活発なやりとりがあります。

 

オンライン選考の仕組みを構築するにあたり、工夫されたことは?

 

とくに工夫が必要だったのは、最終面接の実施方法です。最終面接は学生1名に対し、社長を含む役員4名の個人面接。非常事態宣言発令中で、役員は全員在宅勤務でそれぞれ別の場所におり、接続などのトラブルが起きた際に人事スタッフがその場ですぐにフォローすることができません。加えて、1日に20名ほどの学生との面接が予定されている日もあり、それだけの人数の面接をリモートでスムーズに実施できるのか非常に心配でした。
 

そこで、人事スタッフ3人で後方支援チームを組み、学生と役員、双方のフォローを行いました。3人のうちひとりは人事部長で、役員とともに面接に参加し、終了のタイミングを残りのふたりに報告。ひとりが学生のアテンドを担当し、もうひとりは司令塔役です。学生ごとに「待機室」と「面接室」にあたる2つのWeb面接URLを知らせ、まずは「待機室」で担当のスタッフが注意事項などを伝えると同時に接続状況を確認した後、司令塔役からの指示を受けて「では、『面接室』のURLをクリックしましょう」と学生を誘導。一方、役員は学生の名前と、それぞれの「面接室」のURLが記載されたリストを見ながら、司令塔から「次は◯◯さんのURLに入ってください」と指示を受けて「面接室」を移動します。この仕組みがうまくいき、今のところトラブルがなく、ホッとしています。

 

オンライン化による、応募者の反応や採用活動への影響は?

 

オンライン化によって個性や雰囲気が若干伝わりにくくなるのでは、という懸念はあるかもしれません。
 

Web説明会は学生から非常に好評です。リアルの説明会の場合、理解しきれないまま話が進んでしまったり、聞き逃してしまうことがありますが、配信する動画なら、繰り返し見て理解を深めることができます。また、リアルの説明会は学業が忙しくてスケジュールが合わず、参加を断念せざるを得ないこともありますが、「Web説明会は参加しやすい」という声もよく聞きます。
 

当初、採用担当者には戸惑う姿も見られたものの、いざ実施してみると、予想以上にスムーズに選考が進んでいます。オンライン化により、学生とのコミュニケーションが十分に取れないのではと危惧する声もありましたが、個人面談の回数を増やしたこともあって、一人ひとりの学生とのコミュニケーション量はむしろ増えているかもしれません。また、当社の最終面接では社長が新製品のアイデアを聞くことがあるのですが、「考えてきました!」とあらかじめ用意した資料を画面共有で見せてプレゼンテーションしてくれた学生もいたそうです。Web面接ならではの場面だと面白く感じました。
 

一方、Web面接は通信環境の影響を受けやすく、接続が途切れるなどのトラブルにより、学生が自分の魅力を十分に伝え切れないこともあるのは否定できません。また、画面に相手の顔だけが映るので、リアルよりも目線の動きなど表情の変化に注意が向き、緊張や動揺などが伝わりやすいところもあります。
 

リアルの面接との違いによる採用の可否に対する影響をできるだけ取り除くため、採用担当者には事前にWeb面接の特徴を知らせ、「こうした点は評価に反映しないでください」と伝えています。また、Web面接で生じたトラブルに採用担当者が迅速に対応できるよう、トラブルシューティングをまとめたマニュアルを作成してきちんと読んでもらうようにもしています。

 

今後に向けて検討していること、課題に感じていることは?

 

選考のオンライン化により、私たちはバタバタしたところもありましたが、学生はWeb面接ツールを使いこなすのも早く、みなさんにとってICTが非常に身近な存在であることをあらためて実感しました。企業情報の収集から応募のエントリー、Web面談までスマートフォン1台で済ます学生も少なくなく、学生の就職活動のスタイルやニーズは変わってきています。企業側も変化し、学生に寄り添った対応をしていかなければと思っています。
 

21年卒の学生の採用活動をスタートした当初は、まさか最終面接をオンラインで実施するとは想像しておらず、予期せぬ事態は常に起こり得るということを痛感しました。同時に、不測の事態に対応するためのバックアップは常に用意しておかなければと学びました。22年卒の採用活動においても、イレギュラーな対応を検討しており、現時点では、インターンシップの参加者を選考するための面接 (例年10~11月ごろに実施) をオンライン化することが決定しています。

 

就職活動を行っている学生の皆さんへ

 

選考のオンライン化について、学生の皆さんから不安の声も聞きます。でも、採用に携わる立場としてぜひお伝えしたいのは、Web面接であっても、皆さんの想像している以上に学生の魅力は伝わるということ。笑顔やハキハキした声はちゃんと採用担当者に届いていますから、心配しないでください。また、選考では自分をよく見せようと思いがちですが、大事なのは、自分らしくあること。つくろわず、いつも通りの自分を出していただけたらと思います。

 

2021年卒学生の採用スケジュール ※エントリー受付は終了しています
研究・開発職/文系総合職(営業・マーケティング)/SE職/生産技術職

Webプレエントリー→エントリーシート→Web説明会(動画視聴)→Webアンケート→エントリーシート→適性検査→Web面接(個人面接 1次〜3次)→Web座談会→最終面接→内定
※なお、職種によってフローは異なります

 


最終面接の前に実施されているWeb座談会。学生はミュートにする、質問がある場合のチャットのボタンの位置など、始めに進行に関する情報を共有することでトラブルもなく実施できている。

取材・文/泉 彩子