2018.11.26

【理系学生版】 働きたい組織の特徴 ~経年の変化とは?

この記事の概要
理系学生(大学生3122人・大学院生1732人)において、「働きたい組織の特徴」の経年の傾向を見ました。他の属性と異なる傾向が見られたのは以下の3点です。

●文系学生に比べて「高い給与」と「個人間の給与格差」を支持する傾向が強まっている
●理系「女性・大学生」の、「企業固有の技術やノウハウを学ぶことによる成長」を支持する傾向が強まっている
●理系「女性・大学院生」の、「個人裁量」「主役感」「短期間での経験」を支持する傾向が強まっている

 

理系人材の獲得競争が激しさを増している 

理系人材の獲得競争が激化しています。経済産業省の調査(※1)によると、とくに機械工学や電力、通信・ネットワーク、ハード・ソフトプログラム系、土木工学などの分野で5年後に技術者が不足するとされており、また、IT市場においても、市場が高位成長した場合、2030年にはIT 企業およびユーザ企業情報システム部門に所属する人材が78.9万人不足するという予測(※2)が出ています。

※1 2018年4月発表「理工系人材需給状況に関する調査」より。
※2 経済産業省2016年6月発表「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査」より

 

さらに、 18年5月には、大手金融グループが「19年卒採用から理系人材の採用比率を前年比の2倍にする」と発表するなど、理系人材を求める動きが加速しています。

 

当研究所の大学生・大学院生を対象とした「就職プロセス調査」においても、18年卒、19年卒の学生の卒業年の4月1日、5月1日、6月1日時点の内定率を見ると、理系学生が文系学生を上回っていました。19年卒学生では18年卒に比べてその差が広がっており、文系学生に比べて理系学生の内定獲得が前年以上に早く進んでいることがわかります(6月1日時点の内定率の文系と理系の差は18年卒が12.2ポイント、19年卒が15.4ポイント)。

 

このような状況の中、理系学生の獲得に悩んでいる企業も少なくないのではないでしょうか。

そこで今回は、採用におけるコミュニケーションの参考情報として、18年8月に発表した「働きたい組織の特徴(2019年卒)」(※)の調査結果の中から、理系学生がどのような企業組織を望んでいるのか、文系学生や学生全体と比較した際に特徴が見られた項目をご紹介します。

 

※「働きたい組織の特徴」調査…就職活動中の大学生および大学院生を対象に、経営スタイル、貢献と報酬の関係など、組織の特徴を表す29の項目について、対立する選択肢のどちらがより自身の考えに当てはまるかを調査したもの(詳しくはこちら)。

理系学生は、給与の高さや個人間の給与格差を支持する傾向が強まる

まずは、文系学生と比較した際に違いが見られた点を2つ紹介します。

1つめは、文系学生に比べて「これまでの経験(学業など)を活かして成長できる」組織を支持する傾向にある、ということです。直近3年間の調査結果(表1)を見ると、このような組織を支持する学生全体の割合に大きな変化ありませんが、理系学生全体の方が高く、文系学生全体と開きがある状況が続いています。

 

■表1 文理別の「経験を活かして成長できる」を支持する割合の経年変化

A:これまでの経験(学業など)を活かして成長できる」、「B:これまでの経験(学業など)とは無関係に、ゼロから学べる」の対立項目にて「A」「どちらかといえばA」「B」「どちらかといえばB」の4択で回答。表内の数値は「A」「どちらかというとA」の合計値を比較した

 

2つめは、文系学生に比べて「給与は高いが、個人間で待遇に大きく差がついたり、降格になったりする可能性は大きい」組織を志向する傾向にあることです。このような組織を支持する学生の割合を理系学生全体と文系学生全体で比較すると、3年間でその差が開いてきています(表2)。背景として、理系人材の獲得のために、新卒者の初任給に文理で差をつける企業や、理系人材に対して高い報酬を提示する企業が出始めていることなどが考えられます。

 

■表2 文理別の「高い給与・個人間の給与格差」を支持する割合の経年変化

※「A:給与は高いが、個人間で待遇に大きく差がついたり、降格になったりする可能性は大きい」、「B:給与は低いが、個人間で待遇に大きく差がついたり、降格になったりする可能性は小さい」の対立意見に対して回答。表内の数値は「A」「どちらかといえばA」の合計値を比較した

 

理系「女性・大学生」は、「企業固有の技術やノウハウを学ぶことによる成長」を支持する傾向に

 

理系学生において、「大学生」と「院生」の「支持する組織の傾向の違いやその変化」を見たところ、「院生」の方が「個々の人材のもつ専門性が強みとなっている」組織への支持が高い、など毎年の傾向はあるものの、経年の変化としては、明確なトレンドを見出すことはできませんでした。

志向の変化がより明確に表れたのは、「女性・大学生」と「女性・大学院生」においてです。

 

まず、「女性・大学生」の最も顕著な傾向は、「会社のもつノウハウや型を学ぶことで成長する」組織を支持する傾向が、大学生・大学院生全体に比べて 強まっていることです(グラフ1)。19年卒では、全体に比べて5.8ポイント高く、選択率も年々増加しています。

 

■グラフ1 「ノウハウから学び、成長できる」組織を支持する割合の経年変化

A:会社のもつノウハウや型を学ぶことで成長する」、「B:個人が試行錯誤を行うことで成長する」の対立項目にて回答。グラフは「A」「どちらかというとA」の合計値の推移

 

また、「企業固有の技術や商品、ブランド、ノウハウなどが強みとなっている」組織を支持する割合も3年連続で増加しており、理系「女性・大学生」の「企業独自の技術やノウハウから学ぶことで成長したい」という志向の強まりが見てとれます。

 

なお、項目の中に「ブランド」という言葉が入っているため、大手企業志向が想起されるかもしれません。そこで19年卒の上記2項目を支持する理系「女性・大学生」の「最も志望する企業規模」を集計したところ「500人未満規模」が42.1%で、大学生・大学院生全体の32.7%より高く、必ずしも大手企業への志向が強いわけではないことがうかがえます。

 

理系「女性・大学生」が“企業ノウハウからの学び、成長”を重視するのは、なぜなのでしょうか。実際の学生の声をご紹介します。

 

理系「女性・大学生」の声

  Tさん システム工学専攻 機械メーカーへ入社予定

大学で学んだ知識を生かせる仕事はしたいですが、入社時点で強みとなる技術や専門性があるわけではないので、その企業にある技術や知識、ノウハウを身につけた上で今自分にある専門性を高めたり、強みを持つ分野・領域を広げたりしていきたいと考えています。だから、新卒入社で働く組織は、個々人の専門性が強みとなる組織よりも、企業固有の技術やノウハウがある組織がいいですね。

 Oさん 情報系専攻 システムコンサルティング会社へ入社予定

自分には、自力でゼロから学んだり、試行錯誤したりして何かを成し遂げた経験がほぼありません。受験勉強をはじめ、誰かに教えてもらいながら物事を進めることがほとんどだったので、就職も、組織のノウハウを得るためにするものという感覚があります。手取り足取りである必要はありませんが、ある程度方向性を示してもらったり、アドバイスを受けたりできる組織がいいですね。

理系「女性・大学院生」は、「主役感」「個人裁量」を支持する傾向に

次に、理系「女性・大学院生」の傾向をご紹介します。

それは「あまり知られていない企業(組織)だが、主役感のある仕事ができる」組織を支持する傾向が全体に比べて高く、強まっているということです(グラフ2)。

このような組織を支持する理系「女性・大学院生」の割合は3年連続で増加しており、2019年卒では全体と比べると5.4ポイント高くなっています。

 

■グラフ2 「主役感のある仕事ができる」組織を支持する割合の経年変化

A:個人の裁量権は小さいが、ステータス感のある企業(組織)で働ける」、「B:あまり知られていない企業(組織)だが、主役感のある仕事ができる」の対立項目にて回答、グラフは「B」「どちらかというとB」の合計の選択率

 

また、「仕事のやり方に明確な型がなく、個人の自由や裁量に任される」組織を支持する割合も2年連続で増加し2019年卒では全体より6.9ポイント高くなっています。

「様々な仕事を、短期間で次々に経験する」組織を支持する学生の割合も17年卒から2年連続で増加しており、これらの点から、理系「女性・大学院生」においては、自立し、自らが主役となって仕事を引っ張っていくことで経験を積みたいというキャリア像を描いている学生が増えていることが垣間見られます。その背景などについて、学生の声をご紹介します。

 

理系「女性・大学院生」の声

 Kさん 化学系専攻 電機メーカーへ入社予定

所属している研究室の教授が学生に任せるタイプで、自分で考えて試行錯誤し、その結果を先生に報告・相談してまた次の進め方を自分で考える、ということを繰り返すうちに、自分で自由に考えて研究を進める面白さを感じました。なので、働くのも、どちらかというと個人の自由や裁量に任される組織がいいですね。ベースとなる型や方法を教わった上で、あとは自分の裁量で進めて、必要に応じて周りのサポートも受けられるのがベストです。

 Aさん 物理学専攻 システムインテグレーション会社へ入社予定

これから長い年数働いていくにあたり、日の目を見ないかもしれない裁量権の小さな仕事をするよりも、「自分がやった感」のある仕事をする方が、充実感を得られると考えています。となると、小規模の企業の方が、個人が担える役割が大きい、あるいは、携わることのできる範囲が広いなど、自分の取り組みが成果に反映されやすい環境があるように思います。大企業だと、人数が多い分、個人の裁量が小さかったり、自分主導で何かができるようになるまでに時間がかかったりする印象があるので、魅力に感じません。

 

なお、理系「男性・大学生」の志向に関しては、理系学生全体の特徴として見られる「給与は高いが、個人間で待遇に大きく差がついたり、降格になったりする可能性は大きい」組織を支持する割合が、19年卒において57.7%と全体(50.3%)よりも高い結果となっています。また、経年で見ると、17年卒から52.4%→51.6%→57.7%と徐々に高まっています。そんな理系「男性・大学生」にも聞いてみました。

 

理系「男性・大学生」の声

 Aさん 数学科専攻 金融機関へ入社予定

利益に貢献した分、給与が上がる方が理にかなっていると思います。理系といっても、企業で即戦力となるような技術があるわけではありませんが、どんどん結果を出していくのが自分の性分に合っています。今後は、たとえ大手でも個人間で待遇に差をつけないような経営はできないはず。高度経済成長時代に右肩上がりだった時代と比べて、結果を出さない限り生き残れない時代なので、そもそも安定的な給与が保障される仕事はなくなっていくと思います。

 

理系「男性・大学院生」の志向に関しては、ここ数年間での大きな変化は見られませんでした。ただ、選択率は少ないながらも「若く新しい企業である」組織(17年卒:15.0%→19年卒:19.4%)や、「一人で完結する仕事の割合が多い」組織(17年卒:18.7%→19年卒:24.1%)、「ドライな人間関係で、プライベートでは関わりがない」組織(17年卒:19.6%→19年卒:26.4%)を支持する学生の割合が少しずつ増加しています。

また、全理系学生を男女のみで分けて比較しても、大きな差は見られませんでした。

 

今回の調査結果から、「理系学生」といっても、「学部生/大学院生」×「男性/女性」で分けた場合、属性の別によって支持する組織の特徴が異なることがわかりました。理系学生を採用したい企業は、例えば女性の大学生に対しては「企業固有の技術から学べること」、女性の大学院生に対しては「自身が中心となってプロジェクトや事業をすすめること」についての志向を質問してみるのはいかがでしょうか。学生の関心が高い場合は、面接やその後のフォローの際に、自社の独自技術や教育制度、任せる業務範囲などの詳しい情報を伝えることで学生の志望度を高められるかもしれません。理系学生全体で支持が高かった「給与の高さ」「これまでの経験を活かせる」といったことも含め、会社説明会、採用HPや就職情報サイトでの情報提供に活用することも一案です。

属性ごとの志向の特徴を個々の学生とのコミュニケーションに生かすことで相互理解が進み、より良いマッチングにつながればと思います。

 

イラスト/Chino A

 

「働きたい組織の特徴」調査バックナンバーはこちら
「就職プロセス調査」バックナンバーはこちら

 

【働きたい組織の特徴 (2019年卒)調査概要】

調査目的

就職活動中の大学生および大学院生の「働きたい組織(企業、団体、官庁など)の特徴」を
把握する

調査対象

リクナビ2019(*)会員より、2019年3月卒業予定の大学生および大学院生
※:株式会社リクルートキャリアが運営している、就職活動を支援するサイト
https://job.rikunabi.com/2019/

調査期間

2018年5月18 日~ 6月14日

調査方法

インターネット調査

調査内容

「働きたい組織」の特徴

回収数

大学生 4,943人 大学院生 1,431人  計 6,374人

集計対象

大学生 4943人
(男性・文系:1,694人 男性・理系:1,123人 女性・文系:1,585人 女性・理系:541人)
大学院生 1,431人(男性・理系:1,017人 女性・理系:291人 文系:123人)

●文系:法学、商学、経営学・経済学、人文学、社会学、その他文系
●理系:機械、電気・電子、情報、建築・土木学、応用化学、生物・農水産学、医学・歯学、
薬学、その他理系