2018.08.01

INTERVIEW こんな人と働きたい!  Vol.4 テリー伊藤 / 演出家

各界の著名人に、これまでに出会った、プロとしてすごいと思った人、影響を受けた人など「こんな人と一緒に働きたい!」と思う人物像をインタビュー。

仕事って長時間だから、一緒にいて疲れない人がいいね

てりー・いとう●1949年、東京都生まれ。日本大学経済学部卒業。寿司店やアパレルメーカーのアルバイトなどを経て、73年にテレビ制作会社に入社。『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』『ねるとん紅鯨団』などヒット番組の企画・演出を手がける。その後、自らが代表を務める制作会社ロコモーションを設立。『浅草橋ヤング洋品店』など数多くの番組やテレビCMを演出。近年はコメンテーターとしても活躍しており、情報番組『白熱ライブ ビビット』(TBS系)、『サンデー・ジャポン』(TBS系)などに出演中。2017年9月から慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)で心理学を学ぶ大学院生でもある。

 

仕事は常に「なめてかかって、真面目にやる」

 

――テリーさんは大学卒業後、テレビ番組制作会社に就職されたんですよね。AD(アシスタント・ディレクター)時代は大変なこともあったのでは?

大変? そういう発想はなかったです。「演出をしたい」と自分で思って入ったわけだし。もっと、どこかなめていましたね。

 

――なめていた?

僕の基本姿勢として「なめてかかって、真面目にやる」というのがあるんですよ。これは仕事でも常に考えています。テレビの作り手としても、出演する側としてもそうだし、ラジオ番組をやっているときも、「大したことないや」くらいの気持ちで、一生懸命やる。

これは僕だけじゃなくて、スポーツ選手なんか特にそうなんじゃないかな。例えば、プロ野球の新人投手が初めて1軍で投げるときに、「新人選手ですけど、よろしくお願いします」というような感覚でマウンドに上がらないでしょう? 「俺の球なんて打てるわけがないだろ」という気持ちでいないと、勝てませんよね。

そういう気持ちって、みんな持っていていい気がするんですよ。もちろん、会社員もね。そう言えば、僕は2017年秋から大学院で心理学を学んでいるんですけど、学部の授業で知り合った女子学生にすげぇヤツがいるの。物怖じしない子でね、休憩時間に「テリーさん、面白い子を集めるから、一緒に飲みましょう」って話しかけてきてくれて友だちになったんだけど。

 

――「逆ナン」ですね。

そう(笑)。で、話してみたら、個性的だけど、真剣に物事に取り組む面もあってさ。その友だちが今年、大企業に就職して、入社当初は「ハワイで起業したいから、2年くらいで辞めるつもりです」なんてちょこちょこメールが来てたの。ところが、最近、連絡がないんですよ。あいつのことだから、何だかんだ言って仕事が面白くなってきたんだろうね。気が利くから職場で重宝されているだろうし、社会で活躍するのはこういう子なんだろうなって思っています。

 

上司は、部下を好きなようにやらせてくれるような呑気な人が一番

 

「迷ったら、笑える方へ」という言葉を人生の指針にしてきたというテリーさん。「コトが大きいと、慎重になりがちですよね。でも、それでは新しいことを生み出せない。コトが大きければ大きいほど笑える方へ進むよう心がけています」。

 

――仕事上で影響を受けた上司や先輩がいたら、教えていただけますか?

影響は常に受けていますよ。故大島渚監督や是枝裕和監督などの作品を観ると、「ああいう映画を作りたい」と憧れるし、新聞やテレビに出ている誰かの言葉に「すごいな」とうならされることも。ただ、特定の上司や先輩から影響を受けたという感じではないです。

というのも、クリエイターの仕事って、1から10まで誰かに教わったり、指示をされて何かを作るわけではないんですよね。どういう作品を作りたいか、自分でイメージを描くことから始まるので、それは目の前にいない人からでもいくらだって学習できる。家でテレビを観ながら、「なるほど、こういう風に作るんだ」とか。

 

――常にあらゆるものから学ぶ感じなんですね。

そう、そう。

あと、よく「影響を受けた人」とか「尊敬する人」って言うけど、影響を受けたり、尊敬をするというのが必ずしもいいことかどうかはわからないですよね。特定の誰かの影響を受けたり、尊敬するというのは、その人を超えられないということだから。

 

――確かに!

でしょう? それに、仕事って長時間だから、すごく影響を受けちゃうような、あまりにも優秀な人と働いていると、疲れちゃいませんか? だから、一緒にいて疲れない人がいいね。特に上司は部下を好きなようにやらせてくれるような呑気な人が一番なんじゃないですか。

 

――テリーさんが1980年代半ばから11年間総合演出した『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』は当時の大ヒット番組として有名ですが、ビートたけしさんとのお仕事はどうでしたか?

こちらが出した企画に対して、たけしさんが細かいことを言うことはなかったですね。ただ、たけしさんは当時の日本で一番バラエティ番組をシビアに見ている人物。その人に企画を提案するからには、弾き飛ばされないよう、相当面白いものを考えなければと思っていました。そういう意味では、僕の場合、演者と作り手の関係は「ライバル」のような、どこか距離を保つ感じ。プライベートで飲みに行くことはほとんどありません。

僕はお酒が飲めないこともありますけど、打ち上げの席も失礼のないよう顔は出すけれど、タイミングを見て帰っちゃう。だって、そこで飲めない酒を飲んでいたって、何も生まれないですよね。それよりも、いかにして次も良い企画を出すかが大事じゃないですか。

 

学生の持つ、社会人にはないものに魅力を感じる

 

「若い学生さんたちと話していると、社会問題に関心を持っている人も多いですね。発達障がいの子の支援をしたいとか、犬の殺処分をなくすための活動をしていたり。すごいなあと思いますよ。僕が若い時なんて、自分の半径5メートル以内にしか興味がなかったから」。

 

――大学院に通われていて、若い学生さんたちへの印象は? 「最近の若者は保守的」というような声も聞きますが…。

若者が保守的というのは、今に始まったことじゃないですよ。若い時って、みんな保守的じゃないの? だって、自信もないし、社会がどんなものかも知らない。飛び切りの才能を持った人ならともかく、保守的なのが普通だと思いますよ。社会に出て、「会社ってこんな大きなことができるんだな」とか「仕事って面白いんだな」と感じて初めて、保守的じゃなくなっていくんじゃないですか。

大学院で学生さんたちと話すと、みんな優秀だなと思いますよ。パソコンを使いこなして、何しろ手際がいいです。それに、力が抜けていますよね。気負いがない。この間も学部の研究発表で驚いたのが、テーマ設定の発想が豊かなんです。「双子コーデの精神状況を分析する」とか「町のよろず屋のビジネス形態を社会に広めるには」とか。「大学まで来て、こんなどうでもいいことを研究してるんだ」って笑っちゃったんだけど、素晴らしいなと思うんです。今の若い人たちが学生時代に感じ取ったものは、僕たち社会人にはないものだから。それはものすごい財産。社会に出ても、大切にしてほしいですね。

 

取材・文/泉 彩子 撮影/鈴木慶子

 

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