測定技術研究に関する 論文&研究発表

【測定技術研究所の研究員に聞く】
“人”と“組織”のより幸せなマッチングのための研究発表
「個人の性格特性と組織風土特徴との適合に関する考察」

SPIをはじめとする各種適性テストの開発を手掛けている、株式会社リクルートキャリアの測定技術研究所。先ごろ、「個人の性格特性と組織風土特徴との適合に関する考察」と題する研究結果を発表(※)。「所属する組織風土と、個人の性格特性との適合が、組織適応感に影響する」こと、そして「一体感を求める組織風土では、相対的に個人の組織適応感を得られやすい」ことが実証された。詳しい研究内容とともに、どのような社会的課題を背景にこの研究がスタートしたのか、そして今後どんな活用が期待されるのかを、研究員の園田友樹に聞いた。(聞き手:江田佳子)
(※)経営行動学学会第15回大会

この研究についての論文はこちら

個人の性格特性と組織風土特徴との適合に関する考察


(右) 測定技術研究所 研究員:園田 友樹
(左) 聞き手:就職みらい研究所 主幹研究員 江田 佳子

測定技術研究所 園田 友樹(写真右)

筑波大学人間学類で心身障害学を専攻。2007年に「個と組織を活かす」というブランドスローガンに惹かれて株式会社リクルートマネジメントソリューションズに新卒入社(現在は組織変更によりリクルートキャリアに所属)。SPIをはじめとした採用領域の営業を3年半担当した後、現部署へ。SPI3など各種検査の開発に従事している。

採用後の「なんとなく、合わない」がなぜ起こってしまうのか?
という問題意識

江田
このたび行われた研究内容は、若手社員の「個人の性格特性」と「組織風土」との適合度が本人の組織適応感にどのように関係するかを明らかにするものだと伺っています。このテーマを研究するに至った経緯を教えてください。

園田
採用に関わっている企業人事の方とお話ししていると、「職務適性の面ではピッタリなんだけど、なんとなくうちの会社と合わない」という声を耳にします。近年、社内イノベーションを起こしたいといった背景から自社にいないようなタイプの人材の採用にチャレンジする企業も多いのですが、そういったケースでも「職場にうまくなじめていない」という声をよく聞くように感じますね。
江田
自社にいないタイプを採用する動きは、確かに強まっていますね。さまざまな企業のお話を伺っていると、「事業変革のスピードが速くなる中で、新しい事業アイディアを考え推進できる人材を採用したい」という声は珍しくありません。一方で、いざ採用してみたら「社内で浮いている」とか、「早期離職してしまった」、なんていう声も聞きますね。
園田
まさにその、「せっかく期待して採用した人材なのに、すぐに辞めてしまったり、入社後に組織内で不活性になってしまうのはなぜなのか?」という問題意識が、本研究に至った背景です。マッチングにはいろいろな観点がありますが、「社風」と「個人」をマッチングさせるためのモノサシは少なく、採用場面で相性のようなものを指標として積極的に見ようとしている企業もまだ少ない。ただ、過去の研究を見ると、「個人と組織の相性は、定着や離職行動に影響する」というテーマの研究結果がありました。そこで、「組織風土によって適合しやすい性格特性があり、それらが一致している社員の方は組織適応感を持ちやすい」という仮説を立て、これをデータで実証するために研究を始めました。職務適応性だけでなく、社風との相性を可視化して組織と個人のマッチングを行うことができれば、個人がもっと適合感を感じる職場で成果をだし、企業にとっても自社に合い定着しやすい人材を採用することができるのではないかと考えました。それによって早期離職や、活躍するはずなのに不活性になってしまうといった事態を少しでも減らせるのではないかと研究に取り組みました。

組織風土と、個人の性格特性が
「真逆」では、適合感を感じにくい

江田
なかなか難しそうな調査ですが、具体的な手法を教えてください。
園田
27社の20代社員1376名に対して、「本人の性格特性」「自社への主観的適合感」「自社の組織風土特徴」の3つについて調査を行いました。組織風土と、本人の性格特性を関連付けるフレームはこれです(右図参照)。所属企業を4つの組織風土(象限)に分け、調査対象者の性格特性をSPI3を用いて把握。その上で、「今の会社が自分に合っていると思うかどうか」を5段階で聞きました。
江田
調査の結果、どんな結論が見えてきましたか?
園田
仮説では、「個人と組織が同一の象限(たとえば創造重視な個人と、創造重視風土の組織)の場合に適合感が高い」という結果が出ると考えていました。実際、「同一象限の人は適合感を感じやすい」ということが確認されましたが、調査の結果、新たに見えてきたのは「対角の象限の人は、適合感を感じにくい」ということでした。
たとえば「秩序重視風土に合いやすい性格の人」が、「創造重視風土の組織にいる」場合、より適合感を感じにくいということです。

江田
なるほど。対角の象限では適合感を感じにくいというのは分かりやすいですね。しかし、「自社にいないタイプ」を採用するということは、「異なる風土にマッチする人を採用すると」いう可能性が高まることになりますよね。その時はどうしたらいいんでしょう?
園田
そこが大事ですよね。あえて自社の風土特徴と異なる人を採用する場合は、注意してフォローしたり、自社の中でもより合いそうな部署に配属することで、より適応しやすくなると考えられます。自社の組織風土や本人の特性を分かった上でケアやコミュニケーションができる上長や職場であれば、異なるアイデンティティを持つ人材であってもメンバーの一員として早期に信頼を築きやすくなります。結果として、そのメンバーを通して新たな知見が得られたり、職場の活性化につながることが期待できます。ただ、採用側が現場にその意図を事前に十分伝えておかないと、「なんでウチに配属したんだ?」となってしまうことがあるので注意が必要です。

事前に適合度を知ることで、
個人を活かせる採用・配属をひろめたい

江田
調査で分かったことを、どのように活用してほしいと考えていますか?
園田
採用の現場で「社風に合う、合わない」で個人をスクリーニングしてほしいのではなく、あくまで「個人を理解する一つのモノサシ」として見てほしいと思っています。たとえば面接の場面で、「この人はうちの仕事に適性もあり成果も期待できそう。でも、うちの組織風土にはやや馴染みにくいかもしれない」と理解した上で採用し配属の際にもケアをすることができれば、入社後の適応感や定着のしやすさは変わっていくはずです。
 配属の際に、本人の性格特性と真逆の風土特徴を持つ部署に配属するのはお互いのリスクを高めることになります。それでもあえてそこに配属するのであれば、十分にフォローする。できないなら真逆は避ける。そういう意思決定と配慮にこのモノサシが活かせればと思っています。
江田
なるほど。今まで企業視点で伺ってきましたが、企業風土を知ることは、個人側にとっても有効ですね。リクナビ2016では、登録者側がSPI性格検査を受けられるようになり、自分の特性をより把握しやすくなりますが、個人はこの研究結果をどう活用すべきでしょうか?
園田
まず、SPIを通して「自分はこういう組織風土のほうが合いやすいんだ」と理解した上で、企業研究を行ってほしいですね。おすすめなのは、現場で活躍する先輩社員にたくさん会って話を聞くこと。多くの社員に会うことで組織風土を感じ取ることができるのではないでしょうか。その際、先ほどのフレーム図の「どの象限に当てはまりそうか」などを考えてみると、自分に合う・合わないが理解しやすくなると思います。自分を知り、組織風土を自分の感覚で感じ取ることで、よりフィット感のある企業選択ができるのではないでしょうか。

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