就業レディネス形成に影響を与える要因に関する研究

《就職みらい研究所 REPORT》
キャリア発達の視点からみた就業レディネス形成に影響を与える要因

 就職みらい研究所では、キャリア発達の視点から就業レディネスの形成に影響を与える要因について、研究を進めてまいりました。この度、その研究結果が出ましたので、ご報告いたします。

はじめに

 就業レディネスは「社会人としての自覚」と「自己理解の促進」により構成され、「就活への満足感」とならぶ就職活動の充実を表す要素です。就業レディネスを用いて入社後の適応との関係を分析したところ、就業レディネスは入社後の新人時代の適応、さらには現在の適応にも関連があることが確認されました。これは社会人として心の準備が整った状態で入社日を迎えることは、入社後の働きぶりや適応・定着に長期的にポジティブな影響を与えて、その人のキャリア=職業人生にとって大切なポイントになることを示唆するものでした。

 それではよりよい就職を実現するために大切な要素である就業レディネスの形成には何が影響を及ぼしているのでしょうか。今回の研究では、既存の様々なキャリア論と照らし合わせながら、キャリア発達の視点から就業レディネスの形成に影響を与える要因を探りました。

<研究タイトル>

キャリア発達の視点からみた就業レディネス形成に影響を与える要因

研究テーマ

 キャリア発達とは、社会の中での自分の役割を認識し、自分をコントロールしながら社会の一員として主体的に生きていく力を身につけていくことで、さまざまな経験を通して形成されます。多くの人にとって就職は、生涯にわたって続く職業人生=キャリアの入り口となります。
今回、キャリア発達の視点から、アイデンティティ形成(※1)とキャリア自己効力(※2)という2つの概念に着目して、就業レディネス形成との関係性を検討しました。

研究の概要

 実際に就職活動を体験した社会人(1年目)へのインタビュー調査の結果をもとに、アイデンティティ形成ならびにキャリア自己効力と就業レディネスとの関係性を紐解いていきました。
調査対象となった7名は全員、第一志望もしくは希望する会社に就職することができており、第三者から見ると就職活動は成功したと思えるものでしたが、キャリア発達の視点から見ると、そのプロセスや結果はさまざまでした。
研究結果をまとめると、以下の2点に集約されます。

<研究結果サマリー>

・ 入社時にアイデンティティが確立(アイデンティティ達成)されていれば、
  就業レディネス(社会人としての自覚)は高まっているが、アイデンティティ形成の
  途中状態であるモラトリアムでも就業レディネスは高まることがある。

・ 主体的な進路決定(キャリア自己効力)がなされていると、入社時の
  就業レディネス(社会人としての自覚)は高まっており、職業選択において
  主体的に意思決定することは就業レディネスを形成する上で重要な要素である。



以上のように、アイデンティティが確立していなくても、主体的な進路決定ができたならば社会人としての自覚を促進し、就業レディネスの形成につながっていることが確認されました。就職活動にあたっては明確なキャリアデザインを持つことにこだわるよりも、進路選択のプロセスにおいて自分自身の意思で決めることに注力するほうが、社会人としての第一歩を前向きな姿勢で踏み出しやすいといえるでしょう。

おわりに

 成人後のアイデンティティはらせん状に発達するモデルで表現され(※3)、幾度となく危機と再構成が繰り返されます。一度確立したアイデンティティはゴールとは限りませんし、就職時に固まっていなくてもかまいません。働く経験を通じて見つけ出せばよいのです。そのためには先入観を持つことなく、さまざまな仕事や課題に前向きな姿勢で取り組むことが大切なのです。自分のキャリアに積極的にかかわる姿勢は、クランボルツ(Krumboltz)の「計画された偶発性理論(※4)」に通じるもので、就業レディネスが入社後の自律的なキャリア開発の起点となることを示唆しています。

※1)アイデンティティ形成
自分は他者とどのように異なるか(自己同一性)や、自分の社会的な役割や位置づけをどのように定めるか(心理社会的同一性)を認識できるようになること。働くことは多様であり、それぞれに価値があるという多元性を受け容れて、その中に自分を位置づけ、自分なりの価値を見出すことで、アイデンティティを確立(アイデンティティ達成)することができる。

※2)キャリア自己効力

自分がある状況において必要な行動をうまく遂行できることへの自信や確信である自己効力の概念を、進路にかかわる領域に展開したもので、進路選択や適応の過程に必要な行動に関する自己効力のこと。就職活動での直面する課題である職業選択を、自力で解決し克服できるように感じられるかどうかであり、就職活動の納得感や充実感に関わると考えられる。

※3)アイデンティティ発達のらせん状モデル

形成されたアイデンティティは、取り巻く環境の変化や経験からの学習などによって、その後いく度も起こるキャリアの節目で揺らぎ、再構成される。繰り返されるアイデンティティの発達はらせん状のモデルで表現されるが、就職にまつわる青年期アイデンティティ形成は、最初のアイデンティティ確立にあたる。

※4)計画された偶発性理論(プランド・ハップンスタンス・セオリー)

個人のキャリア形成は計画した通りに進むものではなく、むしろ予期しなかった出来事の影響を大きく受けて決定される。そのため、開かれた心で偶発的な出来事を見逃さないで、その出来事や出会いを前向きにとらえて自分のキャリアに最大限活かしていく姿勢が大切だという理論。そのような「偶然」に対して準備ができている人には、あたかも計画していたかのように「必然的」に幸運がやってくるので、「計画された偶然」理論ともいわれている。

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